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2つ以上の食材を組み合わせて食材が持つ力を引き出してあげるのが「食べ合わせ」です。食べ合わせ次第で栄養をより摂取できることもあれば、台無しにしてしまうこともあります。まずは、食べ合わせがどのようなものか理解しておきましょう。
■栄養を活かすも減らすも食べ合わせ次第
みなさんは「食べ合わせ」という言葉をご存知ですか?私達は毎日の食生活の中で、多くの食材をさまざまな調理法を用いて食べています。毎日偏ったものを食べ続けると、摂取できる栄養も偏るため、必然的にさまざまな食材を組み合わせて食べなければなりません。
この食材の組み合わせ次第で、食材が持つ栄養効果を最大限に生かしたり、逆に打ち消しあって減らしてしまうこともあります。それがここで紹介する「食べ合わせ」です。
例えば「健康のためにビタミンEを摂ろう」と考え、ビタミンEを多く含む食材を食べたとします。ビタミンEには強い抗酸化作用があり、活性酸素による有害な過酸化脂質の発生を抑える働きがあります。
しかしながら、ビタミンE単独では効果が持続せず、徐々にその効果は衰えていきます。ここにビタミンCが加わることでビタミンEの抗酸化作用が持続し、より効果を発揮するのです。
つまり、ビタミンEを多く含む食材だけを食べるよりも、ビタミンCを多く含む食材を組み合わせて食べた方が、期待しているビタミンEの効果が得られると言えます。
■食べ合わせには良いものと悪いものがある
このように、2つ以上の食材を組み合わせて、食材が持つ栄養効果を引き出すのが「良い食べ合わせ」の考え方です。その一方で、食材が持つ栄養素を減らしてしまったり、吸収を妨げてしまう食材の組み合わせもあり、これがいわゆる「悪い食べ合わせ」です。
食材の組み合わせ次第で得られる効果の考え方は、「相加作用」「相乗作用」「相殺作用」の3つに分類されます。同じ栄養素の食材を組み合わせて効果を得るのが相加作用、栄養効果を引き出したり、吸収を高めたりするのが相乗作用、栄養を壊したり、吸収を妨げたりするのが相殺作用となります。
■狙った栄養素を足し算する
相加作用とは、それぞれの食材が持つ栄養を足し合わせることであり、似たような栄養をもつ食材を組み合わせることで、摂りたい栄養をよりたくさん摂るというものです。
例えば、「美容のためにビタミンCをより多く摂ろう」と考えた時に、ビタミンCを多く含むレモンと、同じくビタミンCを多く含むキウイやイチゴを組み合わせてジュースを作った場合、ビタミンCの摂取量は足し合わされて多くなります
それぞれの栄養が増えるわけではありませんが、同じ栄養素を含んでいる食材を食べ合わせることで、狙った栄養素を確実に摂ることができます。
■栄養の特性を知って過剰摂取に注意
いくら狙った栄養をたくさん摂りたいといっても、過剰摂取には要注意です。ビタミンCなどの水溶性ビタミンは体外に排出されやすいため、必要以上を摂っても過剰摂取の心配がほとんどありませんが、脂溶性ビタミンは体に蓄積しやすく、過剰摂取の恐れがあります。
例えば、ビタミンAを多く含むレバーとバターの組み合わせは、ビタミンAの含有量が多いだけでなく、脂肪分がビタミンAの吸収を促進するため、過剰摂取の危険性がある悪い食べ合わせであると言えます。
そのため、摂りたい栄養素の特徴を考えて食材を組み合わせることがポイントとなります。
関連食材 | ||
レモン | キウイ | イチゴ |
■吸収や効果を高める食べ合わせ
相乗作用とは、食材同士が持つ栄養効果が似ていても、違った働きを組み合わせることで、より栄養効果を高めるというものです。例えば、「骨を丈夫にしたいからカルシウムを摂ろう」と考え、カルシウムを多く含むチーズを食べたとします。
これではカルシウムの吸収を身体に任せたきりです。カルシウムは吸収しにくいミネラルであるため、ただカルシウムを摂るだけでは効率よく摂取することができません。しかし、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを多く含む食材、例えばサケやイワシを一緒に食べたとしたらどうでしょう。
カルシウムは吸収しにくいミネラルですが、ビタミンDの働きによって吸収が促進され、体内への摂取量が増加するほか、カルシウムの骨への沈着を助ける働きもあるため、より効果的に「骨を丈夫にしたい」という目的を達することができます。
■栄養素と結合して吸収を助ける
もう一例として、疲労回復効果が期待できるビタミンB1とアリシンの組み合わせを紹介します。ビタミンB1は豚肉などに多く含まれているビタミンであり、糖質のエネルギー代謝を促したり、疲労物質である乳酸を減らす働きが知られています。
このビタミンB1の吸収を助けるのが、ニラやネギに含まれている硫化アリルの一種、アリシンです。ビタミンB1は別名チアミンとも呼ばれていますが、アリシンと結合してアリチアミンになると、消化管からの吸収率が上がることが知られています。
そのため、豚肉だけを食べるのではなく、アリシンを含むネギやニラを一緒に食べることで、効率よくビタミンB1を摂ることができます。
関連食材 | ||
さけ | いわし | チーズ |
■吸収や効果を減らす食べ合わせ
食べ合わせの相殺作用とは、食材が持っているせっかくの栄養が食材の組み合わせ次第で打ち消し合い、無駄になってしまうことを言います。つまり、非常にもったいない組み合わせであり、いわゆる「悪い食べ合わせ」となります。
この相殺作用の代表例として、栄養を減らしてしまう、または栄養の吸収を妨げてしまうものがあります。以下に、悪い食べ合わせの例を紹介します。
■キュウリがビタミンCを減らしてしまう
例えば、緑黄色野菜の定番であるキュウリ。野菜と言えばビタミンCがたくさん摂れるイメージがありますが、キュウリにはビタミンCを減らしてしまうアスコルビナーゼという酵素が含まれています。
このアスコルビナーゼは「ビタミンCを壊す」とよく言われていますが、正確には「不安定な形に変える」ことによってビタミンCが壊れやすくなり、結果として他の食材が持つビタミンCを減らしてしまうことになります。ただし、アスコルビナーゼは熱や酸に弱いため、加熱調理をしたり、酢で和えたりすれば酵素の働きを抑えることが可能です。
■ほうれん草がカルシウムの吸収を妨げる
カルシウムは私たちの骨格を維持したり、筋肉の収縮や神経伝達に欠かせないミネラルであり、体内で不足すると骨から溶け出して不足を補おうとします。そのため、カルシウムは毎日の食事から積極的に摂らなければならない栄養素です。
このカルシウムの吸収を妨げてしまうのが、ほうれん草や玄米に含まれているシュウ酸です。シュウ酸はカルシウムと結合することで腸内での吸収を妨げ、体外に排泄させてしまいます。
シュウ酸は水に溶けやすい性質がありますので、茹でることでほうれん草に含まれているシュウ酸の量を減らすことができます。悪い組み合わせを避けるだけでなく、調理方法を工夫してみることも大切です。