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食べ合わせの悪い食材があることをご存知ですか?食材の組み合わせ次第で、無意識に栄養効果を相殺してしまうこともあります。せっかく食べているのに栄養を損なうなんてもったいないですよね。食べ合わせの悪い食材にはどのようなものがあるのか、ぜひとも理解しておきましょう。
昔から「食べ合わせの良くないもの」は色々言われています。例えば「うなぎと梅干し」「スイカと天ぷら」などです。いずれも症状としてはお腹を下したり、消化不良を起こすと言われていますが、迷信であったり、栄養学的な根拠に乏しいものが多々あります。
私たちは「貧血を改善したい」とか「骨を丈夫にしたい」と考えた時に、鉄分やカルシウムの多く含まれている食材を探して食べようとします。それは間違いではないのですが、食べ物の組み合わせによってはせっかくの栄養素を減らしてしまったり、悪影響を及ぼしてしまうことだってあります。
せっかく食べたのに、食べた側から栄養が減ってしまうなんて誰も想像しませんが、知らなければ意外と起こりがちな出来事なのです。
もちろん、食べ合わせ次第で栄養効果を最大限に引き出す食べ方もありますが、ここではせっかく摂った食材の栄養を相殺したり、相乗効果で悪影響を及ぼす「悪い食べ合わせ」について紹介します。
きゅうり + ビタミンCを多く含む食材
ビタミンCは皮膚や粘膜を健康に保ったり、免疫機能を助けるなど、私たちの身体には欠かせない栄養素です。ビタミンCの多い食材といえば果物や野菜が挙げられますが、野菜の定番であるきゅうりにはビタミンCを減らしてしまう「アスコルビナーゼ」という酵素が含まれています。
きゅうりはサラダにもよく使われている食材であるため、きゅうりが他の食材のビタミンCを減らしてしまうという事実には驚かれます。ビタミンCは別名「アスコルビン酸」と呼ばれており、アスコルビナーゼはアスコルビン酸を酸化させる酵素です。
■アスコルビナーゼがビタミンCを壊れやすくする
少し難しい話になりますが、ビタミンCには還元型ビタミンCの「L-アスコルビン酸」と、酸化型ビタミンCの「デヒドロアスコルビン酸」が存在しており、アスコルビナーゼは還元型ビタミンCを酸化型ビタミンCに変える働きがあります。
この酸化型ビタミンCは空気に触れたり、加熱したりすると分解してしまうため、結果としてビタミンCが減少することになります。アスコルビナーゼはきゅうり以外にもカボチャやニンジンに含まれています。
■悪い食べ合わせは調理を工夫しよう
アスコルビナーゼは熱に弱く、48℃以上の熱で壊れてしまうため、加熱調理すれば問題ありません。例えばカボチャの場合、カボチャを生で食べることはなく、煮物や天ぷらなど加熱調理されているので心配はありません。
また、アスコルビナーゼは酸にも弱いので、ビタミンCを多く含む野菜と一緒にきゅうりを食べる場合は、きゅうりを酢のものにすると、酢酸の働きによってアスコルビナーゼの働きを抑えることができます。
ただし、きゅうりやニンジンをサラダに使うのがダメだというわけではありません。ビタミンC以外がメインの野菜、例えばβカロテンやビタミンB1、ビタミンB2が豊富な野菜などと組み合わせると、栄養を無駄にすることが防げます。
なお、ビタミンCは水に溶けやすいという性質もあるため、煮込み料理ではせっかくのビタミンCが溶け出してしまいます。手早く調理するか、溶け出したビタミンCもしっかり摂れるスープなどがおすすめです。
枝豆・玄米・ほうれん草 + カルシウムを多く含む食材
カルシウムは何に必要かと聞かれると、真っ先に骨を連想します。たしかに私たちの体の中では、カルシウムの99%が骨や歯として存在していますが、それ以外にも神経や筋肉など体の生理機能のバランス維持に欠かせないものとなっています。
そのため、カルシウムが不足すると骨がもろくなる骨粗しょう症のほか、イライラしやすくなるなどの精神症状や筋肉のけいれんなどが起きやすくなります。
■フィチン酸やシュウ酸が吸収を妨げる
カルシウムは乳製品や小魚、大豆などに多く含まれていますが、これらと一緒に食べることでせっかくのカルシウムの吸収を邪魔する食材があります。その代表的なものが、枝豆や玄米、ほうれん草です。
枝豆と玄米にはフィチン酸が、ほうれん草にはシュウ酸が含まれており、これらはいずれもカルシウムの吸収を邪魔してしまいます。例えば枝豆とチーズ、いかにもビールに合いそうなおつまみの組み合わせですが、この組み合わせだとチーズにたくさん含まれているカルシウムが台無しになってしまいます。
■悪い食べ合わせの原因を取り除こう
玄米食も食物繊維が多くて健康的とされていますが、知らず知らずのうちにおかずに含まれているカルシウムの吸収を邪魔していることになりますので注意が必要です。
しかし、悪い食べ合わせも調理次第で改善することができます。例えば、ほうれん草に含まれているシュウ酸は水に溶けやすい性質があるため、3分ほど茹でることで含まれているシュウ酸を半分くらいにすることができます。
骨粗しょう症の予防や改善などカルシウムを必要とする場合は、これらの組み合わせに気をつけて献立を考えるようにしましょう。
ゆで卵 + 鉄分を多く含む食材
日本には鉄分欠乏性貧血の女性がたくさんいるため、日々の食生活で鉄分を意識して摂取することはとても大切であると言えます。でも、がむしゃらに鉄分が多い食材を食べようとするのは効果的ではありません。
■吸収の良いヘム鉄を摂るのが効果的
鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄は動物性食品に、非ヘム鉄は植物性食品に含まれています。ヘム鉄は非ヘム鉄の数倍も吸収がよいため、鉄分を補給するためにはヘム鉄を多く含む食品を摂るのが効果的です。
しかしながら、日本人が摂取している鉄分は非ヘム鉄が多いため、いかに効率よく非ヘム鉄を吸収するかがポイントとなります。この非ヘム鉄の吸収を助けるのがビタミンCとタンパク質です。
■ゆで卵が非ヘム鉄の吸収をさらに悪くする
逆に非ヘム鉄の吸収を邪魔する食品も存在します。その代表格がゆで卵です。生卵には鉄分の吸収を邪魔する働きはないのですが、ゆで卵にすると卵に含まれている含硫アミノ酸(硫黄分を含んだアミノ酸)が硫化水素(温泉のような匂いのもの)になり、これが非ヘム鉄と結合することで鉄分の吸収が邪魔されてしまいます。
非ヘム鉄の多い食材としてパセリやほうれん草が挙げられますが、これらは卵との相性がよい食材です。そのため、パセリやほうれん草と卵を食べ合わせる場合はゆで卵にせず、オムレツなどにすると鉄分の吸収が妨げられる心配がありません。
わらび・魚介類 + ビタミンB1を多く含む食材
ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、体内で糖質を分解してエネルギーに変える際に必要な栄養素です。そのため、ビタミンB1が不足すると体内のエネルギー代謝が悪くなり、疲労感や倦怠感のほか、神経に異常をきたして手足のしびれが起きたりします。
また、脳もエネルギー不足に陥ることで思考力が低下したり、イライラするようになります。
自然界にはこのビタミンB1を分解してしまう酵素があり、チアミナーゼ(アノイリナーゼ)と呼ばれています。このチアミナーゼはエビやカニなどの甲殻類や、アサリ、ハマグリ、シジミなどの貝類、コイなどの淡水魚、山菜のわらび、ぜんまいなどに含まれています。
チアミナーゼは熱に弱いため、加熱調理することでチアミナーゼの働きを抑えることができますが、生食すると体内のビタミンB1が分解されてしまい、ビタミンB1不足によるさまざまな症状が現れるようになります。
古代日本では貝類を生食していたため、ビタミンB1の不足が原因となる脚気という病気が流行していました。現代でも魚介類の生食やアク抜き不足の山菜を食べるとビタミンB1が分解される恐れがあるので注意が必要です。
レバーなどビタミンAを多く含む食材 + バター
ビタミンの摂り過ぎと聞いてピンとこない方もいるのではないでしょうか。ビタミンは摂れば摂るほど健康や美容によいイメージがありますが、なんでも摂り過ぎはよくありません。
■水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがある
ビタミンには水溶性と脂溶性があり、ビタミンB1、B2、B6、B12、Cなどは水溶性ビタミン、ビタミンA、D、E、Kは脂溶性ビタミンに分類されます。水溶性ビタミンは摂り過ぎたとしても尿と一緒に体から出ていくため過剰摂取は問題になりません。
一方、脂溶性ビタミンは過剰摂取すると体内に蓄積し悪い影響を及ぼしてしまうので注意が必要です。もちろん脂溶性ビタミンは体に必要なものばかりですので、過剰摂取を心配する前にまずは必要量を摂ることが大切です。
■ビタミンAは油で吸収量がアップする
ビタミンAは粘膜や皮膚を健康に保ったり、体を守る免疫力の維持に必要なビタミンです。脂溶性ビタミンはその名の通り脂に溶ける性質であるため、炒め物などで油を使うと食品中に含まれるビタミンAを上手に摂ることができます。
ただし、レバーなどビタミンAを大量に含んでいる食材は要注意です。一日に必要なビタミンAは成人男性で600μg、成人女性で540μgとされていますが、鶏レバー100gには14000μg、豚レバー100gには13000μgも含まれており、一日必要量の20倍以上となります。
そのレバーをビタミンAを多く含むバターで調理してしまうと、脂の吸収効果も加わってさらなる過剰摂取を招いてしまいますので、悪い食べ合わせとして注意が必要です。