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アボカドはメキシコ料理を代表する食材ですが、日本でもすっかりお馴染みとなっています。森のバターと呼ばれるほど栄養価が高い食材であり、ビタミンやミネラル、脂質などが豊富に含まれています。アボカドの食べ合わせについて、ぜひとも知っておきましょう。
アボカドはメキシコと中央アメリカが原産の果物で、熱帯や亜熱帯で生育します。果樹園で栽培を行っていますが、その木は高さが10mほどになります。収穫期は11〜12月ごろで、濃い緑色の果実をつけます。
熟していない果実はかなり硬いのですが、熟して食べ頃になると、実の表皮を指で押したら凹むほど柔らかくなります。
果実は生で食べることが多く、サラダやタコスに使われます。また、アボカドが醤油に合うことから、海外では巻き寿司に使われることがあり、カリフォルニアロールと呼ばれています。栽培が行われているメキシコでは、メキシコ料理を代表する食材となっています。
■栄養価は果物の中でトップクラス
アボカドは大変栄養価の高い果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維のほかタンパク質、脂質も多く含んでいます。「トロのような味」と言われるのはこのためかもしれません。タンパク質には必須アミノ酸であるリジンやトリプトファンが多く含まれており、発育に欠かせない栄養素です。
アボカドの脂質はほとんどが不飽和脂肪酸で、血中コレステロールを減らすn−9系の不飽和脂肪酸と血液をサラサラにするn−3系の不飽和脂肪酸を豊富に含んでおり、心筋梗塞や脳梗塞など成人病を予防する働きが期待されています。ただし体によいといってもカロリーが高いので、食べ過ぎには注意が必要です。
■果物には少ないビタミンB群が豊富
アボカドにはエネルギー代謝を促すビタミンB1、ビタミンB2も多く含まれており、体力回復や肝臓病の人に最適です。また造血作用や脂肪代謝を促進するビタミンB6や、老化防止に欠かせないビタミンEも豊富に含まれています。
このほか強力な抗酸化作用をもつグルタチオンも多く含まれており、ガンや老化の原因とされている活性酸素を減らす効果が期待できます。
以下の表では、アボカド100gあたりに含まれているエネルギー量や、主要なビタミン・ミネラルなどの含有量を示しています。単品からの栄養摂取に偏ることなく、さまざまな食材を上手に食べ合わせて、バランスよく栄養を摂取しましょう。
エネルギー | 160kcal |
炭水化物 | 8.53 g |
糖類 | 0.66 g |
食物繊維 | 6.7 g |
脂肪 | 14.66 g |
タンパク質 | 2 g |
ビタミンA相当量 | 7μg |
ビタミンB1 | 0.067 mg |
ビタミンB2 | 0.13 mg |
ビタミンB3 | 1.738 mg |
ビタミンB5 | 1.389 mg |
ビタミンB6 | 0.257 mg |
葉酸 | 81 μg |
コリン | 14.2 mg |
ビタミンC | 10 mg |
ビタミンE | 2.07 mg |
ビタミンK | 21 μg |
ナトリウム | 7 mg |
カリウム | 485 mg |
カルシウム | 12 mg |
マグネシウム | 29 mg |
リン | 52 mg |
鉄分 | 0.55 mg |
亜鉛 | 0.64 mg |
アボカドはコレステロールを低下させる不飽和脂肪酸を豊富に含んでいるほか、抗酸化作用のあるビタミンEも多く含んでいるため、動脈硬化の予防効果が期待できます。
この働きを助ける食べ合わせとして、ビタミンCを多く含んでいるイチゴやレモン、キウイフルーツ、ピーマンが挙げられます。ビタミンCには強い抗酸化作用があり、ビタミンEとの相乗効果が期待できます
また、アボカドは果物の中でトップクラスの鉄分を含んでおり、含有量は鶏肉に匹敵するものとなっています。この鉄分を効率よく吸収するために欠かせないのもビタミンCです。
ビタミンCは吸収しにくい鉄分の吸収を助ける働きがあり、一緒に摂ることで効率よく鉄分を吸収し、貧血の予防効果が期待できます。
一緒に食べるとよい食材 | 期待できる効果 |
---|---|
イチゴ リンゴ レモン ピーマン |
コレステロールを減らす 動脈硬化の予防 |
グレープフルーツ モモ アスパラガス |
美肌効果、老化の防止 |
バナナ さくらんぼ イチゴ 栗 |
病後の体力回復 |
牛乳 ハチミツ バナナ |
便秘の改善 |
アボカドは皮を剥いて中身を食べるから洗わなくても大丈夫と考えている方がいるかもしれませんが、それは大間違いです。日本の厚生労働省にあたるアメリカ食品医薬品局(FDA)の2018年のレポートで、アボカドの皮にはリステリア菌やサルモネラ菌が含まれている可能性があると発表しています。
包丁で切ると皮についているこれらの菌が実に付着してしまうため、流水でしっかり皮を洗う必要があります。リステリア菌は冷蔵庫内でも増殖すると言われていますので、冷蔵保存していたからといって油断できません。
そのため、アボカドのかたい皮はきれいなブラシで洗い、清潔なペーパータオルなどで水気を拭き取り、しっかり乾かすようにしましょう。
アボカドには水溶性ビタミンであるビタミンB群やビタミンCが含まれているほか、カリウムが非常に多く含まれています。これらはいずれも水に溶けやすい栄養素であるため、切ってから水にさらしたりすると、せっかくの栄養素が溶け出してしまう恐れがあります。
また、アボカドには脂溶性ビタミンであるビタミンEも多く含まれています。ビタミンEは油との相性がよく、油と一緒に食べることで効率よくビタミンEを摂ることができます。
そのため、アボカドは衣をつけて揚げるフリットにしたり、スライスしたトマトと合わせてオリーブオイルをかけたカプレーゼにするなど、油と上手に食べ合わせるのがおすすめです。
アボカドは切って放置しておくと、実の断面が黒ずんでいきます。これはアボカドに含まれているポリフェノールが空気に触れて酸化することによって起こる現象であり、抗酸化作用のあるレモン汁をかけるか、酢やオリーブオイルをかけておくと黒くなるのを防ぐと言われています。
空気に触れないことが一番ですので、切ったアボカドを保存する場合は断面にピッタリと貼り付くようにラップで包むのがおすすめです。
アボカドは常温で放置すると熟成が進みますので、熟したアボカドを保存する場合は冷蔵する必要があります。ただし、5℃以下の冷蔵庫に保管すると低温障害が起きる恐れがありますので、冷蔵室に比べて温度が高い野菜室に保存するようにしましょう。
アボカドは果物の中でもトップクラスの栄養価を誇っており、果物には珍しく、ビタミンB群と脂質が豊富に含まれています。脂質と聞くと敬遠しがちですが、コレステロールを下げる働きがあると言われている不飽和脂肪酸がほとんどです。
また、カリウムも鉄分も果物の中ではトップクラスの含有量です。カリウムは体内の余分なナトリウムを排泄する働きがありますので、高血圧の予防効果が期待できます。
ただし、いくらアボカドが健康によい果物と言っても、脂質が多く高カロリーな食材ですので、食べ過ぎには注意しましょう。
出典1:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|脂溶性ビタミン 出典2:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|水溶性ビタミン 出典3:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|ミネラル(多量ミネラル) 出典4:厚生労働省|令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 出典5:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)|アボカド/生 |