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食物繊維がどのようなものかご存知ですか?食物繊維の特徴や役割、多く含む食材を知ることで、効果を最大限に活かすことも可能となります。「第六の栄養素」とも呼ばれる食物繊維がどのようなものか、その効果と上手な食べ合わせについて知っておきましょう。
■食物繊維は人が消化できない
食物繊維とはどのようなものかご存じですか?繊維と聞くと、糸状のものを想像する方が多くいます。食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。つまり、体内で消化できないので、人間にとっては栄養分とはなりません。
一方、草食動物は食物繊維を消化する消化酵素を持っているため、分解して栄養分にすることができます。人間の場合は食物繊維を消化することができないため、食物繊維は大腸まで到達し、そのまま便として排泄されます。
人間にとって栄養にならないのであれば摂る必要がないように思えますが、食物繊維には人間にとってとても大切な働きがあります。ここでは食物繊維の大切な働きを解説していきます。
■食物繊維は2つに分類される
食物繊維は水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維の2つに分類することができます。水溶性食物繊維の代表的なものとして、昆布やワカメなどを切った時に出てくるヌルヌル成分のアルギン酸や、果物に多く含まれており加熱するとドロドロになるペクチンなどが挙げられます。
一方、不溶性食物繊維は植物の細胞を構成するセルロースやリグニンなどが挙げられます。いずれの食物繊維も人間の体内では消化されることはありませんが、それぞれ異なった働きによって健康維持に役立っています。
食物繊維は栄養分にならないものの、体内では非常に重要な役割を果たしているため、タンパク質や脂質などに続く「第六の栄養素」と呼ばれています。
水溶性食物繊維はその名の通り水に溶ける性質があり、水に溶けるとドロドロのゲル状、またはゼリー状になります。このドロドロになった水溶性食物繊維が小腸内での栄養の吸収速度を緩やかにするため、食後に血糖値が急上昇するのを抑える効果が期待できます。
また、不要なコレステロールや過剰な塩分(ナトリウム)を絡めとり、体外に排出するのを助ける働きもあります。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けないものの、水を含んで膨らむ性質があります。乾燥した切り干し大根を水で戻したら膨らむようなイメージです。
これによって大腸内で便の容積が増え、大腸を刺激することで蠕動運動を促し、便通を改善する効果が期待できます。また、腸内に存在する有害物質を便に絡めとって排出する働きもあります。
人にとっては栄養分にならない食物繊維ですが、腸内に存在する善玉菌は食物繊維を分解してエサにすることができるため、善玉菌が増えて腸内環境を整えることにもつながります。
食物繊維が不足すると、排便がスムーズにいかず便秘になるほか、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、腸内環境の悪化につながります。健康維持と腸内環境は隣り合わせの関係であり、腸内環境が悪化すると便通が悪くなるだけでなく、免疫力が低下したり、肌荒れが起こりやすくなると言われています。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維はそれぞれ異なった役割を果たすため、それぞれの食物繊維をバランスよく摂ることが大切です。
食物繊維の摂取量は、成人で一日当たり24g以上摂るのが理想とされていますが、実際の摂取量は一日当たり18.4gとされています(令和元年国民健康・栄養調査)。
厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では目標量が設定されており、一日当たりの目標量は18〜64歳の男性で21g以上、15歳〜64歳の女性で18g以上とされています。目標量は成長によって多くなりますので、食材に含まれている食物繊維の量を把握し、意識して摂るように心がけましょう。
性別 | 男性 | 女性 |
年齢等 | 目標量 | 目標量 |
0〜5(月) | − | − |
6〜11(月) | − | − |
1〜2(歳) | − | − |
3〜5(歳) | 8以上 | 8以上 |
6〜7(歳) | 10以上 | 10以上 |
8〜9(歳) | 11以上 | 11以上 |
10〜11(歳) | 13以上 | 13以上 |
12〜14(歳) | 17以上 | 17以上 |
15〜17(歳) | 19以上 | 18以上 |
18〜29(歳) | 21以上 | 18以上 |
30〜49(歳) | 21以上 | 18以上 |
50〜64(歳) | 21以上 | 18以上 |
65〜74(歳) | 20以上 | 17以上 |
75以上(歳) | 20以上 | 17以上 |
妊婦 | 18以上 | |
授乳婦 | 18以上 |
食物繊維は野菜類や穀物類、きのこ類、海藻類など、植物由来の食材に含まれています。食材によって水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の含有量が異なり、両方の食物繊維を豊富に含んでいる食材もあります。
例えば、ごぼうは食物繊維が多いことで知られる代表的な食材で、不溶性食物繊維が多そうなイメージが強いのですが、実は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく豊富に含んでいます。
納豆は食物繊維が多いイメージがあまりありませんが、実は納豆も水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく豊富に含んでいます。
一方、こんにゃくも食物繊維が豊富なことで知られる食材ですが、水溶性食物繊維をほぼ含んでおらず、ほとんどが不溶性食物繊維となっています。それぞれの食材に含まれている食物繊維の量と種類を知り、食生活に上手に取り入れてみましょう。
水溶性食物繊維は腸内で水分を含んでドロドロのゼリー状になり、余分なナトリウムの排泄を助ける働きがあります。この水溶性食物繊維を多く含む食材と一緒に食べ合わせるとよいのが、カリウムを多く含む食材です。
カリウムはナトリウムと拮抗する働きがあり、カリウムを摂ることで体内の余分なナトリウムを体外に排出する効果があるため、水溶性食物繊維と一緒に食べ合わせることで、さらなる効果が期待できます。
また、きくらげやこんにゃくなどの不溶性食物繊維を多く含んでいる食材を食べる際は、水溶性食物繊維を多く含んでいる昆布やワカメ、ごぼうなどを組み合わせるのがおすすめです。
不溶性食物繊維は便のカサを増し、腸を刺激して蠕動運動を促進することで便通の改善に効果がありますが、そこに善玉菌の餌となる水溶性食物繊維を加えることで善玉菌を増やし、腸内環境を整える効果が期待できます。
出典1:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|食物繊維 出典2:厚生労働省|令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 |